My dream journal

①睡眠中に、あたかも現実の経験であるかのように感じる一連の観念や心像。視覚像として現れることが多いが、聴覚・味覚・触覚・運動感覚を伴うこともある。②将来実現させたいと思っている事柄。③現実からはなれた空想や楽しい考え。④心の迷い。⑤はかないこと。たよりにならないこと。(デジタル大辞泉)

2019/5/29 藻に毒される

 田舎らしい独立店舗型のスーパーマーケットの中を縦横無尽に棚の上にものぼりながら走り回っている。空気という目に見えない箱の中で無数の目に映らない細かさの生物がビリビリと音を立てると、私は音の方に向かってレーザー銃のような駆除の機械を発射させる。「きりがない。思っていたより進行しているじゃない。」と呆れた気持ちでいる。パートらしい初老のおばさんが短い脚で懸命に走り、ビリビリという音にワンテンポ遅れて攻撃を加えているのを横目に見て「おっそ。この人しかいないのね。」と哀れみと焦りの気持ちを抱く。

 その昔、生物研究員の男が藻を育てた。その藻の幼生は長いトゲのある球体型で、中心にある裂け目(目だろうか性器の穴だろうか)を閉じたまま、絶えず形を変えながらだんだんと大きくなった。研究室の片隅、風呂桶のような水槽の中のその藻を研究員の男は忙しさにかまけ気に留めていなかった。ある日から藻は歌を歌った。詩の内容は「あなたに会いたい。あなたに会いに来た。」というような内容で、恐ろしくそして美しく甘い響きを持った背筋の凍るような旋律で、空気に溶けるほど微かに。人の長さほど伸び、茎は人の形を真似る。そして藻は毎夜歌を歌った後、女になった。緑がかり濡れている女を風呂桶に見つけた研究員は、怖ろしさに震えると同時に女の美しさに捕らわれた。男は女を殺せず藻から人の形となったその生物の末裔によって、私は今目に見えない微生物を駆逐しようと全身の筋肉と頭を働かせている。

 棚の間の通路を渡り歩いて、一列ごとの空気の長方体にビリビリという音を感じ、バチバチと微生物が床に落ちる音に変える。この店にはもう多くいすぎてきりがない。パートのおばさんが息を切らしてゼエゼエ言っているのが聞こえる。「なぜこうなる前に駆除しておかなかったのか」と心の中で責任者とおばさんを責め立てる。冷凍庫のガラスのドアが20cmほど開いているのが見え、「ああここには人型になりかけているやつがいる」と確信した。

 客だろうか、茶髪ロングの細い女が怒って商品のバターをおばさんに投げつけている。それを尻目に私は店を爆破した。きりがないから。

 駐車場に出ると白いスポーツカーがすぐそこに止まっている。さっきの茶髪女らしい高飛車な車だなと思う。それを通り過ぎ、私の白いスポーツカーに乗り込む。助手席の細身の母は私と同じ顎までに切りそろえたボブヘアで座っている。「遅かったわね。何してたのかは聞かないわ。」「○○さんがね、ソウルにいるから、行くわよ!」と優しく明るい調子で勝手なことを言う。「ソウルって海越えるでしょ、何言ってるの」と言いつつ車を発進させる。

 

---

 

 この頃夢を見ない。良いことだけどつまらない。

 サリンジャーの「笑い男」、「シェイプオブウォーター」その他今までに読んだり観たりしてきた物語がミックスされたような話だな。特に藻の体表面の裂け目はサリンジャーの本から来ているのを確信。読んだときは何とも思わないつもりだったけど、強烈だったのかしら。