2019/01/26 どんぐりの味
私はKちゃんの家の玄関にいる。彼女に「遊びに来たのだ」と紹介されて、車に乗ったままのお父さんにご挨拶する。お父さんはパソコンや書類が幾重にも重なった蛍光灯の書斎を持っている。
まだ明るい朝でKちゃんはドレッサーで支度している。私はというとベッドで眠っている。まぶたにカーテンから差す朝の光がすけて眠りが浅い。ベッドの横をまっすぐのところにある扉あたりのところで「あんな風になってるのをどうして起こすなんてできるの。寝かせてあげなきゃ。」と気遣ってくれる声が聞こえる。言葉を聞いて「私そんなに具合が悪いのか。Kちゃんは優しいな。」などと考える。
しかしこのまま寝ていては心配をかけ続けると思い、うつ伏せの体を引き上げてみる。なるほど身体がだるくてもう一度そのまま腕を胸に敷いて潰れた。その途端に誰かに肩を持たれた。筋肉質な腕は私をあっさり布団から引き剥がす。Kちゃんではないと、腕を感じた時に確信して怯えた。若い男だった。「やっと見つけた、これで…!」と興奮している。そしてその「これ」はどうも私のようだ。幼児がミニカーを床になすりつけるようにして私はうつ伏せのまま引きずられる。そのせいで息も荒く狂気の中嬉々として話す男の顔がずっと見えない。
寝室のウォークインクローゼットの前で止められ、床に強い力で抑えられた。肺が潰れて息が苦しい。引きずられる途中でどんぐりを見た。若い男は手近にあるそれらを拾って、私の胸の下、ひしゃげて組まれ血の止まりそうな腕をほどきもせず、手に一つずつ握らせる。手のひらをぎゅっと握って開かないよう抵抗したが、引きずってここまで私を持って来られる男にそれは無意味もいいところだった。口に無理やりどんぐりをねじ込まれる。前歯にひとつずつ無理やり入れられた。嫌がって噛み砕くとそれをきっかけにすごい音がして、クローゼットを塞いでいたがらくたのバリケードが崩れていく。薄くてもろいベニヤの箱や、古くて欠けた椅子が音を立てて雪崩を起こした。
若い男は私になど構いもせず、勢い勇んでがらくたの残骸を登り、クローゼットに入っていった。地べたにうつ伏せになった私の顔に巻き上がった砂埃がかかった。
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久々に書き留めるほどの長さと意味がある夢を見た。ウォークインクローゼットは両親の寝室の奥にあり、そのドア横には屋根裏収納ができる高さ30cmほどの引き戸がある。その小さくて暗い穴のイメージが、バリケードのイメージになっていると思われる。バリケードは映画レミゼラブルでしかろくに見たことはない。
どんぐりを食べたことはないです。